糖尿病専門医、内分泌代謝・糖尿病内科専門医
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院長駄文

Doctor column

第4回 m3.comに掲載されたインタビュー記事(Vol.2)

2026年6月1日(月)

【宮城】東大文学部卒後、漫画編集者を経て42歳で医師に-小野寺啓・国見ケ丘内科・糖尿病クリニック院長に聞く◆Vol.2

◇退院後の生活を支える医療機関を目指し、勢いで開業決意◇

――診療・設備の特徴と人員体制を教えてください。
 
人員は看護師3人、医療事務2人、管理栄養士1人です。看護師のうち2人は地域糖尿病療養指導士(CDEL)の資格を保有しています。そのほか、総務・労務・経理・SNS更新などは私の妻が担っています。
 
外来でのインスリン導入も実施しており、糖尿病専門クリニックとして急性期病院に引けを取らない診療水準を目 指しています。
 
患者さんの利便性を考えて、血液検査の甲状腺3項目(TSH/FT3/FT4)とBNPは当日に検査結果が出るようにしています。甲状腺専門のクリニック以外で、当日中に検査結果をフィードバックできるのは仙台市内では少ないのではないかと思います。

――2025年5月に新規開院に至ったのはどのような経緯ですか。
 
急性期病院で診療にあたる中で、入院中は完璧に血糖値をコントロールできても、退院後にまた悪化するというケースを何度も見てきました。
 
大きい病院では患者さんの退院後の生活まで関与することはできません。患者さんの生活全般を改善するためには実は退院後のほうが重要で、ご家族やケアマネージャーと連携しながら地域包括ケアにまで視点を広げて支える必要があり、「その調整役こそが私にできることなのではないか」と考えるようになりました。
 
そんな折、2024年4月頃に、大手地銀の支店長をしていた高校の部活の後輩と話す機会があり、「開業するなら資金援助するよ」という申し出をいただきました。「自分の望む医療を実現したい」と考えた時に、開業という選択肢は魅力的でした。
 
当時、既に50歳を超えていたので、開業するならゆっくりはしていられないだろうと思い、勢いで開業を決めたというのが本音です。

――現在の立地を選んだ理由は何ですか。
 
当院が立地する仙台市青葉区国見ケ丘は、区の北西部に位置しており、中心部に比べると糖尿病専門医が少なく、一般内科のくくりで見ても、国見ケ丘にはクリニックがありませんでした。
 
国見ケ丘は1984年に造成が始まった住宅地で、住民は65~80歳くらいの年齢層が多く、私が専門とする生活習慣病や慢性疾患の診療の需要があると考えられました。近隣には大型商業施設があり、主要地方道である仙台北環状線からの交通アクセスも良好です。
 
開業を決意した直後からエリアを歩き回って自分の足で探し、現在の土地を見つけた時は「ここしかないな」と思いました。

◇編集者時代に培った「熱意と誠意をもって言葉を伝える」を医療でも◇

――開院してからの集患状況はいかがですか。
 
右肩上がりに増えてきている印象です。健診で引っかかった方や、糖尿病の専門科がない総合病院から紹介された方が多いです。
 
一般内科や発熱外来も実施することにしたので、どんな患者さんが集まるか開業前は予測できませんでしたが、ふたを開けてみると、近隣エリア以外からも糖尿病の患者さんが多く来院されています。
 
前職では、言葉を扱う編集者として、いろんな方とコミュニケーションを取りながら、「熱意と誠意をもって言葉を伝える大切さ」を実感してきました。目の前の患者さんに対しても「あなたのためにできる限りの診療をしています」という思いがきちんと伝わるように、言葉を選んで治療法などを説明することで、患者さんの安心感につながるよう心がけています。

今は患者さんとたくさんの会話をして、顔の見える関係を築いています。これから徐々に患者さんが増えて忙しくなると、今ほどはゆっくりと話せないかもしれないので、とても幸せな開業期を過ごさせてもらっています。

◇触診の重要性を再認識、身体所見への理解深まる◇

――開業医のやりがいや面白さはどういった点ですか。苦労はありますか。
 
医師としても経営者としても経験を積んでいる途中ですが、今のところ、苦労が上回っています(笑)。勤務医をしながら時間がない中で、勢いだけで開業に踏み切ったため、準備不足だったことを痛感しています。例えば、電子カルテはオンプレ型からクラウド型に変更することになり、初期投資が無駄になってしまいました。
 
なるべく働きやすい職場にするため、社会保険労務士と相談して就業規則をつくっているところです。経営者にも従業員にもwin-winな環境を整備することは、楽しく感じています。
 
また、診療においては触診などから分かる身体所見の重要性を再認識しています。特に、足の触診はできるだけ実施していて、浮腫の有無などを確認することで、腎臓や心臓の問題点を発見することにもつながります。大きな病院では臨床検査技師が行う甲状腺エコーも、自分で検査するようになったことで、所見に対する理解が深まりました。

――地域の医療機関とはどのように連携していますか。
 
入院が必要な症例などは、いずれも仙台市内の東北大学病院、東北労災病院、JCHO仙台病院などとやり取りしています。認知症を併発している患者さんに関しては、近隣の東北福祉大学せんだんホスピタルに紹介することが多いです。外来への紹介では、仙台医療センター、仙台オープン病院、仙台市立病院、仙台厚生病院、などが多いです。

◇厳格な血糖管理だけに捉われず、生活を重視した医療を実践◇

――今後、クリニックとしての目標を教えてください。
 
まずはクリニック運営を軌道に乗せることが1番の目標です。自分ができることとできないことは、スパッと分けないといけないとは思っていますが、地域のかかりつけ医として患者さんの需要にはできる限り応えていきたいです。現状では内科全般や発熱外来も行っており、糖尿病の患者さんであれば、例えば心不全や慢性腎臓病、脳梗塞を合併している症例も診ています。
 
クリニックとして、糖尿病・高血圧症・脂質異常症はもちろん、合併疾患としての心不全や慢性腎臓病をしっかり診られるようにならなければならないし、それが社会的な要請だと思っています。また、内分泌代謝・糖尿病専門医として、甲状腺などの内分泌疾患についても、診断・治療を増やしていきたいです。

――地域医療を支えるクリニックとして、大切にしたいのはどんなことですか。
 
今後、高齢化率が上がれば上がるほど、糖尿病の有病率も上がると予想されます。「糖尿病はチーム医療だ」とよく言われます。慢性疾患なので、日常生活で気を付けなくてはならないことが多く、医師だけではなく、看護師、栄養士らと協力して患者さんを支えていく体制づくりに努めています。
 
そして、数値データだけに捉われず、患者さんと向き合ってQOLを大切にしていきたいです。糖尿病の治療では、HbA1c 7%未満が強く推奨されていますが、それを80歳や90歳の高齢者の方でも厳格に守らなければならないかというと、一概にそうとは言えないと考えています。
 
例えば、どうしても自宅で暮らしたいが同居する家族がいないという状況の患者さんに、毎日自分でインスリンを打って血糖測定をしてもらうのは現実的ではない場合があります。血糖コントロールが多少緩くなったとしても、週1回のインスリンを外来で導入したり、訪問看護師に関わってもらったり、「適切な医療とQOLの落としどころ」を見 極める努力は、今後さらに進行する高齢化社会でますます必要になると考えています。
 
当院の理念の1つに、「One for All, All for One」と掲げています。患者さんやスタッフとの相互理解と相互尊重を通じて、患者さんの要望にできるだけ沿った診療や治療形態を実現して、お互いの人生がwin-winになるよう日々精進していきます。

【取材・文・撮影=福岡美幸】

(vol.1-2共に福岡美幸さんに取材頂いた内容を一部加筆・修正して転載致しました。福岡美幸さんにこの場を借りて御礼を申し上げます。)
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